神経内科

神経内科トップ > どんな病気を診ているの? > 脳硬塞 (1) (2) (3) (4)

脳硬塞(2)

I. 危険因子のコントロール(2)

2. 修正可能なことが十分証明されていない可能性のある危険因子としてアルコール摂取運動不足肥満無症候性脳梗塞高ヘマトクリット血症ホルモン補充療法経口避妊薬があげられる.

  • E. アルコール摂取:
     アルコール量と虚血性脳血管障害リスクにはJ型の用量依存カーブが示されており,非飲酒者と比べて1日2杯の飲酒は予防的に働き, 5杯を超えるとリスクが上昇する.慢性の過飲酒と急性中毒が若年成人の脳梗塞と関連している.アルコールの有害な効果は血圧上昇,過凝固状態, 心臓の不整脈,脳血流低下などである.軽度から中等度のアルコール摂取は,冠動脈疾患の減少,HDL−コレステロールの上昇,内因性t−PAの 上昇をきたす.
     男性は2杯/日,妊娠していない女性は1杯/日までが推奨される.すなわち摂取量を中等量(1日2杯以下)にすることが勧められ, 患者・家族に大量飲酒を止めるよう強く勧告したり禁酒プログラムを紹介する必要がある.
  • F. 運動不足:
     運動不足は虚血性脳血管障害の相対リスクが2.7倍である.定期的な身体活動は,若年死,心血管疾患,脳卒中のリスクを減らす. 高血圧,心血管疾患,糖尿病,肥満などの脳卒中危険因子のコントロール,さらに血清フィブリノーゲン低下,血小板機能低下,血清t‐PAやHDLの上昇などが関連している.
     運動量として週に3〜4回,30〜60分の運動,すなわち中等度の運動(早歩き,ジョギング,サイクリングや他の有酸素運動)が勧められる. また心疾患を有するなどの高リスク患者では医師管理下での運動をすることが必要で,神経症状を有する患者では能力に応じた運動が勧められる.
  • G. 肥満:
     肥満(BMI≧30kg/F)は脳卒中をおこしやすく相対リスクは1.75〜2.37である.肥満者は年齢とともに増え,血圧,血糖,脂質の上昇と関連してしいる. 男性は内臓脂肪型肥満(相対リスクは2.33),女性は肥満(27≦BMI≦28.9kg/Fで相対リスクが1.75,そして29≦BMI≦31.9kg/Fで1.90,32kg/F≦BMIで2.37) と体重増加がリスクとなる.体重増加で脳卒中が増加するので肥満者では食事療法と運動療法による減量が推奨され,体重は標準体重の120%以下に保つことが勧められる.
  • H. 無症候性脳梗塞:
     無症候性脳梗塞は,脳梗塞の危険因子であるとする肯定的な報告が多い.欧米の研究では,頭部CTで脳卒中の10%に無症候性脳梗塞を認めるが, 大きな皮質枝梗塞であり,無症候性脳梗塞の危険因子は糖尿病である.本邦の研究では,脳梗塞の12.9%に無症候性脳梗塞を認め,86.1%がラクナ梗塞であり, 無症候性脳梗塞の危険因子は年齢,拡張期血圧,心房細動である.脳ドック受診者の検討では,脳卒中の年間発症率は無症候性脳梗塞のない例0.28%に比べて, 無症候性脳梗塞がある例では2.8%と高い.
     無症候性脳梗塞から発症した脳卒中では,約2割が脳出血であるので,抗血小板薬の投与は慎重を要し,二次予防では高血圧の管理が重要である
  • I. 高ヘマトクリット血症:
     高ヘマトクリット血症は,脳梗塞の危険因子であるとする肯定的な報告が多い.欧米の研究では,ヘマトクリット値51%未満に比べて,ヘマトクリット値 51%以上の脳梗塞の発症頻度は2・5倍であるという報告がるが他方,否定的な報告もある.
     本邦の研究では,ヘマトクリット値46%以上で脳梗塞の出現頻度が増加する.慢性期の高ヘマトクリット血症の治療で二次予防を検討した報告はないが, 脳梗塞再発とヘマトクリット値の間に関連はないとする報告がある.したがって高ヘマトクリット血症の治療を行うことを考慮してもよいが,勧めるだけの 十分な再発予防の科学的根拠がない.
  • J. ホルモン補充療法:
     閉経後のホルモン補充療法と関連した脳卒中リスクは低い(0.23〜1.46)が,さらなる研究が必要である.脳卒中に関する有益性とリスクは,骨粗紫症や 乳ガンなどのホルモン補充療法の他の効果とバランスをとる必要がある.
  • K. 経口避妊薬 :
     経口避妊薬の相対リスクは0.6〜7.09である.50μg以上のエストラジオールを含有した第一世代では脳卒中は増加するが,低用量のエストロゲンを含有した 第二世代では増加は認められない.喫煙,高血圧,糖尿病,片頭痛,血栓塞栓の既往などの危険因子がある女性では経口避妊薬の使用は控える。